巨大プラントオープンに思う

 

 

 

midori-yaのすぐ近くの安曇川町内に巨大スーパーセンタープラント高島店がオープンしました。高島の皆さんには大人気のようで連日にぎわっています。

特に驚いたのは高島市広報3月号において「にぎわいと商工業の活力に向けて」と題して福井市長のプラント絶賛評が出ていたことです。

駐車スペースに大屋根があり快適に買い物ができる。

市内外からも多くの人が集い地域の活性化につながる。

とよくぞプラント本社は滋賀県初出店を高島に選んでくださったとうやうやしく感謝されている印象を受けました。

 

エコの時代とか手作りの大切さとか一方で言われていますが、プラントはまさしく大量生産・大量流通・大量消費の象徴のような商業施設です。世の中はやっぱり今でもこういうものを目指しているんだなと改めて痛感させられました。
豊富な品揃え・一ヶ所で生活に必要なものすべてが揃ってしまうという一極集中の配給所のような体裁。
そして何よりこのプラントの核弾頭とも思えるのは豊富なバリエーションのお惣菜コーナーです。適価で美味しそうで品数豊富・・・
高島の主婦たちは皆、こぞって料理する意欲を失くしてしまうのではと心配に思えてなりません。
いわゆる共稼ぎ所帯や仕事を持っている女性にとっては逆に福音とも言えるプラントなのかもしれませんが・・・

 

私自身としては毎日の食事はすべて手作りすべきものだと思っていますし、それを実践しています。
それは経済性だけでなく食の安全を確認し、自らの家族が食するものを自らで用意するという基本的な動作は人間にとって不可欠だと思うからです。

しかし今日、事実これが困難なご家庭はとても多いと思うのです。近頃男女の役割分化を強調し、男は仕事女は家事というスタイルの復古を推奨し、そうすれば世の中が健やかに、エコになるのではないかといった精神論者的な主張が見受けられます。しかしながらよく考えてみると昭和世代とは経済成長を旨として大量生産・大量消費・大量廃棄を標榜し、大きな負の遺産を今に残しているわけですが、その昭和世代のご家庭とは典型的な男女分業型専業主婦ファミリーなのです。
男女の役割感を強調し、性的属性による分化を基調とした価値変革を再来させてもそれが社会の健やかさやエコ化を生むとは到底思えません。
専業主婦が暇に明かし毎日プラントへ日参し、大量購買・大量消費・大量廃棄している様を考えればすぐわかることです。

 

必要なのは伝統文化とか大和精神の回帰ということなどではなく、丁寧に日々を暮らし無駄な消費を行わないという倹約と堅実の精神なのです。これは世界中どこの国の人でも持っている人は持っているものなのです。
イギリス人の多くが伝統的に持っているものですし、キューバの人たちも「一枚のシャツを毎日きれいに洗って着る」という言葉で象徴されるように実践している精神です。民族性とは無縁なのです。

 

そもそも今の社会で多くの勤労世帯が苦しい生活を強いられる結果として堅実・倹約を実行できず、スーパーのお惣菜を毎日買って帰り夕食の糧とせねばならないのは、一重に労働環境の過酷化・雇用の不安定化、そしてそれを阻止・改善するための連帯や団結ができない風土がこの社会に蔓延しているからなのです。
個人貯蓄がなくなり、企業内留保がこの十年間で増えたと言われています。まさにここが問題なのです。
「戦後最大の好景気」「人手不足」なのになぜ個々の労働者の地位は向上しないのかおかしいではないですか。問題はここなのです。

文明の西洋化や知性的傾向が問題なのではないのです。

 

懐古主義や「やまとごころ」の推奨を行ったところで何も暮らしは楽になりません。

幸せなど訪れません。むしろそれは今の社会のあり方・経済のあり方を肯定し、それをさらに進めようという人たちがスローガンとして掲げていることなのです。
その後押しをすることにしかならないのです。

 

必要なのは個々の人間を金もうけのネタにしようという現代の商業主義からしっかりと我が身をそして我が家族をプロテクトしようという意味での防衛戦としてのエコ精神なのです。
日本だけでなくどの世界でも家庭内分業して古来から生活してきたわけです。
男は力仕事、女は細かい手仕事。

これこそは共稼ぎの原点なのです。ここを誤解してはなりません。

共稼ぎが悪いのではないのです。パートとはそれが現代型に変貌しただけなのです。

大事なのは共稼ぎであろうが専業主婦家庭であろうが、各人がきちんとした理性的判断と知性を持って生活し、無駄なものそして有害なものを買わないというだけのことなのです。
そうして少しでも安価な労働力を提供してしまうこともないように心がけるだけのことなのです。

 

一人一人の毎日のほんのちょっとしたあきらめと割り切りが刹那的な安楽と利便性を求めてしまい、夕方にお惣菜を買いそれが集まってあの巨大プラントを支えていってしまうのでしょうから。