入管法から排外主義へ?

 

近頃いわゆる改正入管法が成立しました。

他の近頃の法案同様、十分な審議なく拙速に強行採決での可決です。

どうしてこのようなものができたのかいろいろな議論があるとは思います。

 

私が思うに要するにこれは外国人労働者を優遇してあげようとか国際化しようとかそんな生易しいことではなく、日本人労働者の地位を下げようというのが狙いではないでしょうか。

 

この入管法成立のしばらく前に「人不足による倒産」が多発しているなどという報道が新聞紙上でなされていました。

失業者も多いし、いわゆるブラックとかそんなことばかり言われているのに人不足で倒産などということになれば逆に売り手市場なので労働環境は改善するはずなのにどうしてこんな報道がなされているのかといぶかしく思いました。

よく記事を読んでみると個人経営の小さなお店などで後継ぎがいないからその代で辞めるなどとそういったものまで含まれているというのです。

どうもインチキくさい数字です。

見出しだけは「人不足による倒産深刻」と言う風に出ていますので労働者を確保しないといけないといった世論を巻き起こすのが狙いの政府マスコミ一体となったキャンペーンであったと思えてなりません。

 

それが布石となっていてこの入管法と来たのではないかと思います。

入管法が施行されれば間違いなく多くの外国人労働者が今以上にやって来られます。

そうなると日本も否応なしにドイツやフランスや北欧のように外国人労働者と日本人労働者の競争ということがでてくると思います。

 

外国人の方はすでに私の周辺でもたくさん働いておられます。

土木や工場での電子部品製造などに従事している方が多いと思いますが皆さん熱心に勤勉に働いておられるのを見かけます。

賃金はとても低い場合もあるということをよく耳にします。

そうすれば日本人労働者に対しても

「嫌だったらもうインドネシア雇うからいいんや。」とか

ベトナムの子の方が頑張ってくれるし辞めてもらおうか。」とか

ベトナムの人も8万だからあんたも8万で来てくれへんか。嫌やったら辞めてくれ。」

こういったセリフが横行すると思われます。

 

とても困ったことです。

そんなときに窮地に立たされた日本人の労働者の皆さんが、外国からやってきた労働者の人たちと連帯して使用者に対してそして政府に対してもっと環境改善とか労働条件の改善を団結して要求していくという形になればよいのですが、そうではなくてやはり日本人というのは本来的な弱さからお上には立ち向かえず弱いものに対していじめをする方向へいってしまうのではないかと思います。

 

日本人どころかヨーロッパでもそんな現象が既に起きています。

ドイツでもトルコ人に対する排斥。

フランスでもアフリカ系や中近東系の人に対する排外主義。

そして北欧でも同様のことが起こって重大な問題となっています。

 

単なる嫌がらせでなく直接的な暴力や殺傷事件に発展しているのです。

それを題材にしたのがかのアキ・カウリスマキ監督(「ル・アーヴルの靴みがき」の監督)が最近撮った「希望のかなた」という映画です。

 

日本でも同様のことが将来起こるのではないかと危惧します。

つまり

日本は日本だけのもの。

日本の清い国土を守れ。

日本のまほろばを守れ。

インドネシアは出ていけ。ベト公は出ていけ。

などと言ったようなスローガンをネトウヨまがいに言いだす連中が出てきてはては直接的な襲撃事件のようなものや殺傷事件を起こしていく可能性もあると思います。

 

こうやって「何とか外人を追い出せば日本人労働者の地位が守れるから」と言ったことを言えば何となくそれを支持するような人たちも出て来るのかもしれません。

身の上が一番大事ですから。

 

しかしこれは非常に息苦しく殺伐とした社会環境を作っていくことにしかならないと思います。

またそれによって労働環境が改善するとも思えません。

もちろん人間の生の交流というのは偉大ですし、愛というのは国境を超えたものですから外国からいらした労働者の人たちと日本人の労働者の交流の中からいろいろな形での素晴らしい信頼が生まれてきたり愛が生まれたりして結婚される方もおられるでしょうし子どもができる方もあるでしょう。

そうすれば

インドネシアの人っていい人よ。」とか

ベトナムの彼、日本人よりとてもいい人よ。」

とか「一緒にがんばらないと仲間だから」とそういったいい意味での交流も生まれてくると思います。

 

そんなところからいわゆる日本人の悪い意味での島国根性とか世界の中での裸の王様のような状況から日本人が抜け出すきっかけに外国人労働者流入がむしろなってくれればいいなとは思っています。悪い方向へ行けば今のネトウヨのような傾向がこの入管法によってさらに加速される危険性も出て来ると思います。

例えばいわゆる在日の人たちへの攻撃に際しても「ベト公と一緒についでに朝鮮もやっつけてしまえ。」などといったようなスローガンが出て来る危険性もありますからとても危惧されることです。

 

入管法施行後の日本の状況が心配に思えてなりません。

本当の意味での国際化がなされないまま万博だのオリンピックだの巨大な金食い虫の上辺だけの(国際行事)が企画されていくのです。

                       2018年12月