デフレこそ私たちの味方

 春へ向け稀に見る「値上げラッシュ」らしい。本当に困ったことだ。ガソリンも全く高止まりしたまま。コロナ禍の苦しさもあって人々の暮らしは本当に大変だ。近年、この国の庶民の日常生活が低収入や慢性的な不景気(と思いません?)の下でもなんとか成り立ってきたのは、総体的に生活必需品(食料品、ティッシュ、トイレットペーパーなど)の価値が比較的低く安定していたからに他ならないと思う。つまりデフレ基調こそが、唯一の生存手段だった訳だ。 なのにそれをおびやかす「値上げブーム」だ。タメ息の止まらない奥さん方は、多かろう。

 「そろそろ皆さんにもデフレ脱却を考えて頂く時かと。新しい日本経済の飛躍の為に。」などと、日銀の回し者のような毛並みの経済学者の弁。「今の若い世代は、ずっとデフレと不景気の下で育ってきた。」だから「インフレは危ないものというアレルギーがあるのでは」?「それをそろそろ捨ててもらわないと」??「インフレに伴ってもちろん賃上げも必要とは思いますよ。だから、その意味では政治や企業にも『がんばってもらって』」???どんな風に「がんばって」下さるのだろう?賃金値上げ、ベースアップ…これは、労使の「交渉」つまり「力関係」によって決まるものだ。春闘などまさしくそうだ。ならば、今の労働力学は果たしてどうだろうか?言うまでもない。企業側の1人勝ちばかりだ。大手から中小までほとんどで。そもそも勝負と言うのは、対決する当事者が2人いるから成立するものだが、今の労働組合の大半は「連合」系だ。もし、企業の人事部が何人かを内密に出向させ、労働組合に潜入させ、反企業的な闘争を行わないように、そして会社としては「嫌だな」と思うような高いレベルの賃上げ要求は決して出さないように組合内で工作活動をしているとすれば…?ほとんどの人は、「それはひどいな。」とか「不当なことだ。」「あってはならぬ所業だ。」と言うだろう。でもちょっと待て。今の「連合」というのは、そもそも純粋に「そういうもの」なのだ。「交渉」と呼ぶべきものなど何もない。あるのは、単なる「調整」と一方向の「伝達」だけだ。そこをみんなで再確認しよう。今の春闘なんて、競馬で言えば「究極の出来レース」だ。ストも全くない。私が中学生の頃は、いつも春に京阪のストがあった。ストで春が来たと感じたものだった。

 賃上げがついてこないのに値上げだけ見切りスタートすれば、私たちの暮らしが追い詰められるのは間違いない。インフレが好景気をそして生活改善をもたらすという必然性など決してない。それに、これと言った何の公的援助もない。かの経済学者は、「そんな過渡期のアンバランスに対しては、所得の低い方々へは減税の措置で対処することも必要でしょうね。」と。一番、値上げの影響とかで苦しむのは不安定就労とか低収入な非課税世帯(今やこの国の24%!)だ。どうやって「減税によって援助する」の?そもそも物価高や値上げを「減税額」で大きくリカバーできる程の納税額の方々って、元々大富裕な方々。そんな人達、食品の値上げとかそもそも応えていないはずだ。本当に腹が立った。無責任で庶民に誤解を与える発言だ。そして彼は、「若い人たちはインフレの時代の佳さを知っている年代の人達ともっとお話しして教えて頂いたら」とも言っていた。なので、昭和の好景気もバブルも知っている世代として言わせて頂きます。「インフレ基調になれば、益々人々の間の格差が大きくなるだけ。うまみは、常に少しでもお金を沢山持っている方へと多く降ってくるもの」だったと。インフレ化は、決して今日のこの国の庶民の暮らしを楽にはしないし、むろん低所得対策にはならない。否。むしろ真逆だ。

 私は、実は自営業者(個人事業主)だ。業種は「花、園芸」だ。この業界も生産から流通、そして私たち小売りに至るまで全ての局面で苦しい。でも、なんとか各々の場面で工夫に工夫を凝らして、ガマンもして「今まで通り」を今のところ保っていると思う。量も質もサービスも勿論、何よりも価格も。何故?それは単純だ。旧知のこの業界の女性が言っていた。「不景気になったら一番先に切られるのは、花やもん。絶対、要るワケじゃないし。」つまり値上げしたら売れなくなることが、切実に他の品目よりも花の場合は実感されているのだろう。本当に厳しい。ウチも「値上げ」は検討していない。少々、卸値が上がっても耐えるしかないと思う。それが現実だ。

 それ故に言いたい。みんな「値上げ」した商品は(買わないと死ぬような事情もない限り)決して買わないようにしよう!そして、買い控えもしてガッチリ行こう。そして顕著に「値上げ反動の不景気が来た。」と経済界にそして何よりこの国の政府に実感させ、「値上げブーム」を阻止しよう!(このブームを煽っている張本人は国なのだから。)労働組合がもう一度かつてのように本来の労働者の利益を守る団結組織となって、企業側と互角の交渉が出来る「健全な労使関係」が再現されない限り「値上げ」はありえない。「賃上げありてこそ値上げ」だ。今日のこの国では、当分それはあり得ない。ならば、私たちの日々の暮らしがなんとか続くようにしてくれるのは、「徹底したデフレ基調」しかないのだ。それを決して、忘れてはならないと思う。そしてその延長線上に近頃、斎藤幸平とかが近未来の理想社会像として提示している「定常型経済」も在るのだろうと思う。

 数年前まで近くの「バロー」という食品スーパーで1コ¥18のコロッケがあった!よく私も買った。店を一旦たたんでもう一度、再開業した頃。本当に苦しかった。その頃、この18円コロッケには本当に助けられたと思う。「アレ本当に良かったなあ。おいしくて安くて!」と思っている人は、この辺では多いと思う。100均が200均になってしまったら大変だ。今日の日本では、デフレこそが私たちの味方だ。

 p.s.関係ないけど、近頃Mr.岸田の言う「育休中にキャリアアップとかの研鑽とかしてもらえるようにしっかりバックアップしていく。」って言うのは、サラリーマンの昼の休憩時間に「業務マニュアルを読むとか仕事にプラスになることをしてもらうよう推し進めて」とかいう理屈なのでは?労働強化だろ。それは。